◆天界TVドラマ・番外篇風 : 神とルシフェルで『話をしよう。』◆


「ああ忙しいな!
ほんとに幾つ手があっても足りないよ!」

「・・今日も大変そうだな
なにか手伝うことあるか?」

「・・・ルシ!
あーちょっと待ってくれ。
人間向けに新しく作らなきゃいけないエリアが・・・・
・・・・あーもーいっそここ丸ごとルシに任せちゃうか!」

「・・・いいよ?
引き受けてやるよ」

「え?
いや今のは冗談のつもりで・・・本気?」

「どうみても手が回ってないし
補佐出来るレベルの奴もまだまだ育っていないしな
仕方ないだろう
暫くの間 時渡りは最低限にしてそっちにかかるよ
資料とか用意してくれ
ただ、手伝いに適当に希望者引き抜いていってもいいか?」

「い、良いよいいよー!勿論!
こっちはもうマニュアルもあるからあんまり心配しなくていいからさ
難しいことあったらこっちでもフォローするから
マメに連絡してくれな?」

「はは、了解。
あ、丁度良いな。コレコレ」

「お?
先の時間の品か?」

「ああ。“携帯電話”って言うんだが
遠くの奴と話をしたり手紙を送ったり出来る装置なんだ
君と私のコレを通じるようにしておけば
話をしたり伝言を残すのに便利かなと思ってな」

「なるほど、オーケーオーケー
これをそういう風に働くようにすればいいんだな
・・・・・よし!できた」

「色はこれで良かったか?
もっと色々あったんだが・・」

「いや、有難うこれでいいよ
つやつやしてて綺麗だな
・・・おっと、説明書は後で読んどくよ」

「気に入ってくれたなら良かった
・・じゃあ 資料とか用意できたら呼んでくれ
ちょっと要員確保に行って来る」

「おー・・ほんとに良いのか?
やっぱやめるなら今のうちだぞ」

「いやいや、君が作業でパンクする前に
一寸くらい引き取っておかないとな
また、えらいことになってからだと大変だし
システムが落ち着いたら余裕もできるだろうから」

「そうだな・・
じゃあ慌しくて悪いが・・またな!」

「ああ、またな」



あの子は 特別な鳥だった
原初の闇の力を残す 暁色の翼
時を渡る力と 星の光を帯びる姿
闇でもなく 光でもなく
光であり 闇でもある

世界の黎明に小さかった姿は
私と一緒に大きくなり
世界の運営という複雑な仕事のために
かれは時を渡り歩き
様々な可能性を目にして知らせてくれる

・・此処から動けない私(かみ)のために

かれはずっと私の助け手だった
友人であり 家族のようなものであり
腐れ縁であり 相方だった

だが・・・



『・・・とうとう、時が来たよ。
タイムリミットが近い』

『・・・・・・・。
いつもの、冗談じゃ・・
ないんだな?』

『ああ。
何度も何度もゴメンな。
今度こそ・・・本当だ』

『・・君が私に耐性をつけさせようとしていたことは
わかっているんだがな・・・
この“狼少年”が』

『ははは・・
全く言うとおりで言い返せないな
・・・・ルシ』

『・・・』

『・・・・ルシフェル
ごめんな』

『・・・・・まあ、いい。
もう何度も聞いているからな
・・で?
今日の別件とやらは何だったんだ?』

『それなんだが・・・
ルシには、人間のサポートを頼みたい』

『人間のサポート?
・・一応人界の見回りは担当ではあるが・・』

『いや、そうじゃない。
天界にいる、唯一の人間の書記官を知っているだろう』

『・・・。
<イーノック>のことか。
彼が、どうしたんだ?』

『・・・彼は、暫く後に嘆願するはずだ。
ひとつの計画を考え直してくれと』

『イーノックが・・?
“人間の”・・?

・・・・・!? ちょっと待て
まさか、それはあの洪水計画ルートの・・・』

『ああ。
本来なら避けていたところなんだが・・

どうやら、バッドルートの一種だと思って
原因と回避方法を探していたこの計画は
代替わりに必要なものだったようなんだ
・・・急速に、周囲の状況が符号し始めた』

『・・・なんだって・・』

『これまでははっきりしたことがわからなかったが
<イーノック>が嘆願するビジョンが見えたことで
次代候補がはっきりした

ーーー次の<神の代理人>は、あの子だ』

『・・洪水を起こし、<方舟>だけを残すことで
新しい<神>に継がせる世界を作るのか?』

『いや・・
どうやら止めようとする意志のほうが肝心らしいな
そこまでしかわからないが』

『・・・。で?
私に、なにをしろと』

『・・・・言っただろ
あの子を、助けてやってくれ』

『私が?
付き添い?

酷いな・・・

引き継ぎが終わったら君が居なくなると・・・
知っている、私に?』

『ああ。
ルシに頼みたい。大事なことだからな』

『・・・』

『・・・・
ルシフェル』

『・・わかったよ
君の本気の願いは、断れない
わかっているんだ。だが・・
エル』

『なんだ』

『今度こそ、冗談だったらよかったよ

・・では、すぐにそっちへ戻る』

『・・ありがとな ルシ』

『・・・どういたしまして エル』



随分前から知っていることだし
ルシにも何度も冗談で予告していた

・・・この世界の<神>・・
いや <神の代理人>には期限があり
いつか代替わりをするのだと

この仕事は楽しい事もあるが
けして楽な仕事ではない
たまにヤケを起こして作業を放り投げたくなることも
システムダウンさせて休業してやろうかとか
フルリセットしたくなることもある

近い目線でものを見られる別の立場で
ずっとルシが居てくれたから
“僕”はここまでこられた

だけど・・
ルシはまだずっと
ずっと先まで時を辿ることになる筈だ


「ルシを独りには・・・
したくないんだ」


呟きが空間に溶ける

次代に関する情報は不確定なのか
僕にたまに見える予見にも
ルシの渡る時の中でも目にすることは叶わなかった

だけど

<イーノック>

僕がふとしたことで気に入って
天上に迎えた人間の子
天界の住人である天使達とは違うせいで
ちょっと困ったりもしてるみたいだけど

地上の“人間”の様子も見ているルシにとっては
彼は最初 僕の気まぐれで連れてこられた
可哀そうな子にしか見えなかったようで
時渡りの旅から帰って僕の話を聞くなり
やれやれと溜息をついて顔を見に出かけたっけ

・・・数日後には
なぜだか不思議そうな顔をして
「・・・普通そうなのに、なんか変な奴だったよ」
と首をかしげていたけれど


「・・ルシフェル」


空間に声を乗せる。
ふわりと音は溶けていく。


「大丈夫。
あの子はいいこだよ。
きっと・・・」

いい道連れになれる筈なんだ

僕の見た予見の断片で
ルシは あの子と笑ってた


「・・・ごめんね
イーノック」


僕が選んだわけじゃない筈なのに
知らなかった筈なのに
僕が選んでしまったのかもしれない
この、面倒な仕事の後任を


「それとも・・・」


これも可能性のひとつに過ぎないんだろうか
万華鏡のような
綴れ織りのような
揺らめく水のような
一瞬の炎のような
結晶のような
無数の時と空間の中の
ありふれた沢山で たったひとつ

この世界そのものすら
そのひとつに過ぎないのだけれど


「・・・さあ
最後の仕事をしにいこうか」


誰もいない、<神>の玉座の間を後にする
居慣れた仕事部屋へ
ルシが戻るまでに 今できることを片付けよう


「ちょっとだけ
・・あの子が羨ましいな」


呟いて、ドアを開ける

イーノックと居たルシは
僕が見たことのなかった表情をしていた
別に これまでの関係に不満はないのだけれど

ただもう少し・・
見たことのないルシの表情を
もう少しだけ見ていたかったな と


「・・・」


本当のさよならはもう少し後だから
それまで最後の挨拶はとっておこう
だから・・
これだけ 祈りに寄せて


ありがとう ルシフェル
僕の大好きな 暁の鳥



FIN.



*眠い頭からなにかが転げ落ちました*



A:「神がいいやつだったら」
B:「ルシフェルと神は仲良し?」
C:「ルシフェル魔王担当説」
D:「神代替わり説」
E:「神は“世界の管理人”であり<神の代理人>」(上には上が的な)
F:「君のお願いには逆らえないです」(ニコ動sm12540324参照)

に、オリジナル捏造設定を目一杯叩き込んでみました。
神の本来の一人称が“僕”なのは自嘲も含んでいます。
見た目はフェルさんよりも若めで口調も普段軽く、ハイティーンにしか見えないイメージ。


うん、なんていうか、ごめんシャダイlllorzlll



20101130:




この時点ではただの思いつき単発でifだったんですが。
「エル」は性格がほぼはっきりしているので
<Flag>背景にはみでたり<電子歌人と羽根と歌>にもパラレルで出没したりしています。
案メモ中の鳥ネタの一部分にも。

・・捏造基本篇の“神”はかれでいいのかもしれません。


追記:
ということで持ってくることに確定したので設定穴埋めします。
穴埋用断片:<Parts>

 →→ そして、3番目の主軸存在という結果(笑)。



推測と断片/北欧神話めも/覚書目次/筐庭の蓋へ