25:   『境界の扉』

河の渦から見えたものは、多分もつれた川藻や枝のようなものの塊
…でした。その塊が尋ねます。
「境界ノ扉ヲ開クカ?」
金属のような硬質の、しかし澄んだ声が響きました。
鼠が頷くと、塊はこちらに向けて声を発しました。
「鍵トナル言葉ヲ示セ」
「えっ?」
聞き返そうとすると、鼠が言いました。
「何か探していた言葉がないかい?」

                                「あ」 →28へ
                              「…?」 →29へ


   26:   『係留点』

そう長くもない船旅の終わり。白い円形の台座のもとに舟は縁を着
け、無事に降り立ちました。
「…有り難う」
〈…アリガトウ. キヲツケテ〉
どこか淋しいような優しい気配が届いて舟は消えました。
台座の上に転がっている石をよく見ると、あの羅針盤に似たものの残
骸のようでした。…一方通行だったのかな…。
もう一度、有り難うと呟いて目を閉じました。

                           「帰り道は…」 →31へ


   27:   『星』

いつしか宙空に浮く足もとに、青い星が在りました。
外からでないと見ることの叶わない夢のような青い光を纏って。
一度見たら、けして忘れない…。
「…帰ろう」
目を閉じて、呟きました。

                                「…」 →33へ



   28:   『鍵の言葉』

「お花さんがたに………ランチ、って言いました、けど」
迷子気分だったとはいえいきなり個人名を尋ねるとは、思い返すと少
し照れる気がする。けどコレのことなのか?、と首を傾げて応えると
塊は頷いたようでした。
「扉ハ開ク。行ケ…」
枯れ枝のような手が指し示した中空に別の空間が開けると汽艇が浮か
びます。掴まってて!と叫ぶ鼠の声に船尾を片手で掴むと、船ごとが
力の奔流に巻き込まれ一瞬のうちに流れ込んで行きました。

                         「大丈夫かな?〜」 →34へ


   29:   『?』

「…言葉?」
道は探してたけど…。迷子だから、というと塊はひとつ頷いたようだ
った。ぽん、とどこからかあのチーズパンを投げ返してくる。
「地ノ道ナリ行クナラ ソレニ尋ネレバ良イ」
受け取ると、枯れ枝の様な手を軽く振って水の中に消えた。
「あれ、歩く道でよかったのか」
鼠が見上げています。

                            「うん、ご免ね」→15へ


   30:   『このまま道を辿り』

〈迷い子には、道がある〉
色彩が変わり、淡い金の煌めきを纏い付かせた人影は静かに佇んだま
まそう言いました。
〈月の道は円を描いているのだから、合う時が来ればその場所に還る
ことができる…〉
ややあって頷いて応えると、穏やかに笑う気配がして光は溶けて見え
なくなりました。
「…。このまま歩こう…」
月は見ていてくれるようです。

                           「行ける処まで」 →31へ


   31:   『月の道の先』

辿りつく先は、還るところ。
…自分の帰る場所………。

                           「その場所へ…」 →33へ


   32:   『翼たちの長』

翼に乗って夜空を風のように渡ってゆくと、あの鳩のような鳥が隣
に居るのに気が付きました。こちらを見るその眸が不思議な色彩にた
ゆたうと、鳥は姿を変えました。 黒い輪郭。影のようなその人影は
薄く鋼の煌めきをもって翼たちと並んで駆けています。…何故か、そ
れは月なのだとわかりました。
〈送リ届ケヨウ〉
微笑む気配がして、翼持つものの長はその漆黒のはばたきを空に映し
ました。

                             「かえりみち」 →27へ





※ネタ元原典:デビルサマナー「ソウルハッカーズ」(ATLUS)。 勿論ですが個人的なお遊びの落書きにつき、ネタ元の製作会社等には無関係です。