流星群が流れてから、一年ほどの後。
ひとりの“人”が世を去った。
彼女の胸に置かれた手には黒い羽根が握られ、それは彼女と共に葬られ
た。

彼女には、ひとりの“子”があり。
それは、新しいひととも呼ばれたことのある、堕天使と人の間に生まれ
しもの・・ネフィリムだった。
子供は、彼女の知り人である力ある堕天使の元に引き取られる約束があ
り、彼は親しかった彼女のために約束を守ろうとした。
しかし、彼には他にも多くの世話を必要とするものがあり、日々用意す
るものも色々とあった。
・・・後、ほんの暫くの間。
ずっと子供の様子に注意していた彼が、他に気を取られた間のことだっ
た。子供は、彼の目の届く範囲から迷い出てしまった。

“おかあさん”と、子供は居なくなってしまった彼女をさがす。
探しても、探しても、見つかることはないものを。
ずっとずっと、生まれた時から傍に居てくれたものを、探し続ける。

堕天使は、居なくなった子供に気付いて、その名を呼んだ。
彼女が、子供に与えた名を。
・・・呼んだときには、まだ子供は声が微かに届く範囲に居た。
だが、既に、“おかあさん”と泣く子供のうちから。
自身の名は、零れ落ちて失われていた。
堕天使はあちこちを探したが、大概の者はネフィリムの区別などつかな
い。
“塔”に近いその地には、かれらの姿はけして珍しくはなかったのだ。
・・・彼はとうとう、子供を見つけることが出来なかった。

そして、とても後悔し深く落ち込み。
喪ったものを補うように更に、これまでよりも愛を求めようとした。
しかし、それも真に求めるものには繋がらず。
彼は得られているつもりで得られない、堂々巡りのうちに。
より多くのネフィリムをまた、生み出すこととなる。
・・・凡そ自覚無き、罪のうちに。




 END.


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