◆おまけ(歌ネタ4コマのその後&言語ネタ補完)



「おまえ・・
“字幕”がついて見えるから歌の意味はわかっているだろう!」

まったく・・とブツブツと呟くルシフェルは、イーノックのほうを振り返った。
まだ顔に上った紅(あか)みが引く気がしない。
全くあの時々出る天然キラキラはどうにかしてくれ!
無口傾向になったらなったで、まさか別方向に意思表示能力が出るとは思
わなかったのだ。
以前よりも予測がつかなくて、時々手に負えない。

以前、イーノックがルシフェルの持ち込んだ本や歌の歌詞を知りたがった
時に、細かいと面倒なので神であるエルに頼んで文字とか言葉をルシフェル
と同じように自動翻訳できるようにしようとしたのだ。
だが、ルシフェルの能力だと自動翻訳(文章→字幕・音声→副音声など選択
可能)+簡単習得(発音できないものは自動変換)と人間の範疇を超えてしま
っているし、イーノックにとっては普段必要ではないため。
色々と検討していたのか、それとも多忙で一旦保留にして忘れられてでも
いたのか。随分と経って、本当にごくごく最近になってから、文字と音声
に字幕がつく能力だけがイーノックに与えられた。

・・・なので、聞いていたならルシフェルが歌った歌詞の意味がわからない
ことはない筈なのだが。

「・・・“ニホンゴ”の響きは面白いな
ルシフェル もう一度」

「・・・・イーノック・・・
私を本気で怒らせたいのか?」

“糠に釘”とやらいうやつかもしれないが、これは叱りつけてやるべきかと
眦を釣り上げたルシフェルに、イーノックが顔を向ける。

「・・・すまない。
そうじゃない。」

真摯な声に、怒ろうとしたのを一旦止めて続きを促すと。

「でも、ルシフェルの歌う声が聴きたいんだ。
折角、この旅の間は
私と一緒に居てくれるんだから」

済まなそうに笑う苦笑は、あの何度も見たものに似ていたが。
でも今のものは、どこか幸せそうな気配がして。

「・・・・・・・・・。

おまえは
また
そんなことばっかりきちんと喋って・・・」

折角引いたばかりの頬の辺りの気がまた上がったようでルシフェルはその場で
固まった。
これに耐性がつくにはどれくらいかかるんだ?
いやまさか私は天使だからずっとこのまま?

「ルシフェル・・?」

「・・・・なんだ」

「耳まで紅(あか)い
すまん。また言い方を間違えたか?」

もう間違いとかそういうレベルの問題じゃない・・っと匙を投げた大天使は
周辺の様子を見てくると言い捨ててふいと唐突に姿を消した。
後に残された武闘派書記官は、かしかしと頭をかいて。
ルシフェルの声が好きで賞賛したいだけなのに、美辞麗句などには慣れっこ
の筈の最上級天使が、なぜ自分の単純な感想にあれほど狼狽するような様子
を見せるのかはよくわからず溜息をひとつついて。

ルシフェルの帰りを待つ間に、つい先日手にしたばかりのアーチの扱いに慣
れようと練習を始めたのだった。




20101127:



4コマ+<Call>背景。4コマにつられてコメディ調。
もしも基本篇の時系列順だとこれが<Call>の直後辺りに来てしまうという事態に。
うわあ。

・・・と思っていたら結局やっぱり歌4コマ+オマケも基本時系列上に在ってしまったことが確定。
(<Alert>おまけと<Tell>参照) この状況でもこのボケっぷり。



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