チャーリーの独り言に近いような。 起承転結もオチもなーんも無い小々話です。 |
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「・・マ、 ・・・・・。」 掛けようとした声を飲み込んで、後手にドアをパタンと閉じる。 仕事でやや遠方に数日出掛けることになったので、知らせておこうかと (まあ大体、ついていかないなどと言うことはないだろうが・・)思ったが。 ノックをしても応答の無い部屋を覗くと、ヘッドフォンをしたまま脚の無 い低いふかふかしたカウチに埋もれて転寝をしていた。 性格からすれば如何にも色々な分野で新し物好きそうなのだが、しかし不 器用と精密機器の類とは相性が悪いこともあって長いコードの先に置かれ ているのは少々旧式の、ラジオが聴けてカセットテープやレコード・CDが 再生出来る余り複雑な機能はないオーディオデッキだ。 車で出掛ける際の退屈凌ぎにかけたいものがあると時々データ変換してく れと強請りに来て手間ではあるが、まあ勝手にかけられるよりはマシだろ うか。 はみ出掛けている手の先の床に、点けっ放しの明りを反射する随分と小さ な硝子瓶らしいものが転がっている。 拾い上げて見ると中身はとても細かい透明な粒だった。 ・・・何だろう。 光に翳してよくよく眺めてみると、指先一節程度の色の無い瓶の中には、 やや細長く不規則に丸みを帯びているものが詰まっている。コルク栓には 細い紙ラベルが巻くように貼られ、手書きの・・何と言うか楔形文字のよう な書き方で<English Seashore>と書かれているのがかろうじて読めた。 “イギリス海岸”? ということは、海岸の砂なのか? だとしたらこれだけ選別して集めるのは結構大変そうだ。 中身は石英・・・いや水晶、だろうか。 ラベルもコルクもそう新しいものではなさそうだが、これまで見た記憶が ないということは、しまわれていたのか最近手に入れたものなんだろうか。 ・・・どこかで見付けて買ったのか、自分で集めた想い出の品か、それと も誰かに貰った物か。 光を弾(はじ)くとても綺麗なそれに、ふと遠い記憶がぼんやりと過(よ)ぎる。 ・・・・。 溜息をついて、それ以上考えるのは止めにした。 ヘッドフォンを抜き取ってデッキの横に置く。 音が漏れてこないしメーターの針も動いていないので、もうとうに再生は 止まっていたのだろう。他の動作ランプも点いている様子は無い。電源 を切って、小瓶を棚の小物の横に乗せておく。 カウチの手前に戻って、もう一度深々と溜息をついて声を掛ける。 「・・・マスター! 起きて下さい! 明日からの予定なんですが」 メモを置いておけば一応伝達の用は足りるのだが、口頭で伝えないと 気分によっては時々拗ねて面倒なのだ。 「・・・・・んー」 もそりとしたので聞こえたのかと思ったが、左腕に抱えていたぬいぐるみ (白黒のあれだ)をぎゅうと両腕で抱き締めるとむにゃと曖昧な音を零して 起きる様子は無かった。 「まーすーたー・・」 鼻でも摘(つま)んでみるか、この際起きないのが悪いのだからメモを書 いて額に貼り付けておこうかと思案していると。 彼がぬいぐるみの頭に頬を寄せて、笑った。 「・・・ク〜・リス」 名の響きを確かめているかのような。 「・・・・」 昔の夢でも、みているのだろうか。 このひとは時折、ごく普通の想い出のように『あの頃のクリスは可愛か ったな〜♪』とか暢気な風に口にすることもあるが。 ・・・・・・・あの時期の記憶は、私にとってもこのひとにとっても相反する 二つの意味がある。 何よりも純粋な無邪気で切ない幸福と、決して引き返すことの出来ない 道の始まり。 私にはまだ、優しい記憶として口に出すことは難しい。 ・・・でも。 夜中に目を醒ましても。 貴方がもしも不在でも。 ・・此処に必ず帰って来てくれるのだと、自然に思えるようになったら。 そうしたら。 文句を交えながら、私の記憶の貴方を語れるだろうか。 起こす気が失せて来てしまったので、メモ用紙に簡単に行先と予定時間 等を書き付けてドアの内側に貼り付けた。此処なら気が付かないということ は無いだろう。 「・・・いい夢を」 明りを消して、ドアを閉じた。 かつて、氷の化石と呼ばれたその石が。 貴方の眠りを守ってくれますように。 |
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説明が無いと全く意味不明で大変申し訳御座いませんlllorzlll アイテムがタイタニック関与ネタ前提なので、←が、なんのこっちゃ?という かたは推測年表と補記も参照願。 TVで【宮沢賢治の音楽会】という番組がやっていて、そこで“銀河水晶” のモデルになった川原の砂に含まれるものは“高温水晶”といって透明度 が高くて太陽を反射してとてもきらきらするのだと紹介されていて。 明るめオチになるかと、三章レイフロ書けないだろうかと思ってメモって あった、ぱんだ抱えて寝言言ってるレイフロを混ぜてみたら何故かシリア スに(アレ?)。 見ている夢は三章末〆の図(星見&神話でも語ってる?)イメージで。 イギリス海岸:【銀河鉄道の夜】の作中の“プリオシン(Pliocene)海岸”のモデルとなった北上川 の川原の場所のこと。“イギリス海岸”はそう思わせる風景からの呼び名。 プリオシンは書かれた当時は120万年前とされていたが現在の地質学区切り では変わっている。 高温水晶:高温下で形成された水晶。低温水晶とは少々外側の構造が違うらしい。 見た目の状態はものによるっぽい。 石英:非常に広範囲に存在する鉱物。うぃきぺには特に透明度の高い無色透明なものを水晶 と呼ぶとあるが、水晶(水精)は後からついた呼称で石英=石の花房で結晶の様子を表 しているようだ。 quartzは元々は鉱山の“鉱脈が交差した(場所の、目的とは別の)鉱石”という意味だった ぽい。くぇるくるふてるつ、とか。 Crystal:クリスタル。ギリシア語のkrustallos(Crystallos・クリスタロス。氷などを指す)が語源と されている。水の集まったもの・溶けない氷(化石)と信じられていたとか。後に透明で 綺麗な鉱物も指すようになり“結晶”という意味を持った。 護符や力ある石として大変一般的。 漢字は水晶・水精で“水が結晶したもの”“水の精が宿る石(水の精髄が集まったもの)” という感じ。古名は白石英という分類だったらしい。 【銀河鉄道の夜】は草稿のまま遺され、初出は1934年刊行のものだそう。 北十字(ノーザンクロス・白鳥座)近辺から南十字(サウザンクロス)過ぎま で、その両方の傍にある二つの石炭袋(コールサック。別名:空の穴。暗 黒星雲)の間を汽車で旅する物語。 プリオシン海岸は白鳥の停車場から行ける銀河の縁。 その後、鷲の停車場でタイタニックで沈んでしまった姉弟と連れの青年が 現れ、天上だとされる南十字で他の乗客と共に降りてゆきます。 姉(12歳程)がかおる・弟がタダシ(6歳程)とされていて、日本人か日系人ぽ い。青年は背が高く生真面目で信仰心篤そうという感じ。大学生らしい家 庭教師。本国(日本?移民なら米国?)に帰るところだった様子。 これでふと、タイタニックで日本人と知り合ってたら?と。 で、後で【銀河鉄道の夜】の話を知ってテーマに複雑だったり、面影を見て 一抹の救いのように思ってたら、と。 小瓶は(特に事情は知らない)知り合いからの貰い物。 聴いていたのは賢治作詞作曲の「星巡りの歌」のいずれかの演奏・歌唱版 とか、アニメ映画(ますむらさんの猫.ver)の細野さんのBGMあたりのつもり。 精密機器と相性が悪いのは、音源パオレ同収のDutiful SonとDJCD1のミニ ドラマエピソードから; ヘリオ同収のRed-で棺にステレオ内蔵してあるようなことを言っていたの ですが言い訳ではないなら閉めて(大音量で?)聴くのはどんな感じになる んだろうなと(笑)。 音楽は好きそうなのかなと思っているのですがオペラ座くらいしか特に聴 いている場面とかが無いので、あえて↑のネタと混ぜてちょい旧式のオー ディオを持ち込んでみました。 想い出については、レイフロにも本当は大変重かったりもするんだけど (音源Act.U参照)それでも彼は“確かに幸福だった分まで哀しく思いた くない”と今一緒に居るからこそ笑って話せる、かなと。(背景(半年間)を 考えると別の意味でまた切実なんだが;) チャーリー側のネタは硝子瓶のところがgpで、ココが三章と音源HCの ColdHand混じり。 ぱんだ結構でかいですよねあれ。 二章冒頭のカラーページデータを見掛けたんですが、クリスの眼は青に紫 混じり(夜映り?)で、あのもこもこが茶色に塗られていました(モノクロ で白いので灰色辺りだと思ってた)。犬の子というより・・熊を連想。現 在で、テディベアとか指して例えてテレ怒られたりして(笑)。 星巡りの歌には♪あおいめだまの小いぬ♪があるので(子犬座のこと)夢の 中で(当時は知らなかった)その歌を歌っていたら楽しそうかもな〜と・w・ 本文も説明も纏まり0でスミマセンlllorzlll 20111120: |
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