同居前で割と“半年間”に近い頃・・な感じのif。
時刻は真夜中過ぎたあたり。








[sheep]



 自分を覗き込んでいる顔を、ぼんやりと開けた瞳が認識する。
・・・・・。
切り揃えられた金色の、髪。
透明な硝子越しの、暗い青色の眸。
・・・・クリ、ス?
「・・・。
こんな時間なのに、眠っていたんですか?」
どうせまた、遊びほうけてでもいたんでしょうが、と冷たいように低
く響く声。
でも、棺の脇に膝をついて様子を窺うような表情に機嫌の悪い時の刺
々しさはみられなかった。曖昧な感覚のまま、片手を伸ばす。
「・・・クリス」
「・・・・・・。
はい」
少し迷うようにしてから手を掴んでくれた、その感触に。
ふと、微かに涙が滲む。
「・・・!
マスター?」
どうされたのですか、と尋ねる声には答えずクッションに顔を埋めて
隠そうとすると溜息が聞こえて。
間があってから、物柔らかな仕草だが有無を言わせず引き起こされた。
半身を胸に抱かれるような格好になってうろたえて顔を見ると、怒っ
たような表情で、乱暴に指の横腹で目元が払われた。
「・・・調子が悪いなら、また、明日にします」
“食事”のことを言っているのだと理解して。
思わずぎゅっと服を掴んで引き止めようとする。
「・・・・・なんでも、ない。
なんでも・・ない、から」
こんなこと、望んでいいものじゃないとわかっていても。
何時もと変わらないように、クリスに触れられて、記憶を塗り潰した
かった。
「・・・なぁ、俺を、食べて」
頼む、と縋りたくなるのを堪えて、甘い誘い文句のように口にする。
クリスになら、幾らでも。
たとえ、ただ痛くても辛いだけだとしても本当は構わない。
最後のひとしずくまで。
最後のひとかけらまでくれてやったって。
「・・・・
矢張り、今日は止めにします」
元のように横たえようとする腕に、言い方が気に入らなかっただろう
か、と落胆する。
かろうじて虚勢を張るのが限界で、明るい調子で話す気分にはなれな
かったのだ。
「・・・なんだ、明日にするのか?」
つまらないな、と微笑ってみせると眉がしかめられた。
「・・・・。
おとなしく、寝なさい」
寝不足なんでしょう?、と。
それ以上気付かない振りをしてくれたのだろうクリスは、なら、眠る
まで傍に居てくれ、と駄々を捏ねると深々と溜息をついて了承してく
れた。
「・・・・一緒に寝るか?」
「・・はいれるわけないでしょう」
もう、とうに子供じゃないんですよ、と呟くように言って瞳がどこか
遠いところを見る。
「なら、ベッドで・・」
「もう黙ってください」
伸びてきた手に口を塞がれるのかと思いきや、案外優しく触れた掌が
瞼の上を覆って。
何故か、クリスは淡々と数を数え出した。
「・・・・・。
羊?」
「さあ?
貴方用ですから・・・・蝙蝠かもしれませんね」
優しく暖かい暗さの中で、クリスの声だけを聴いて。
何時の間にか、眠りに沈み込む。
「・・・・おやすみなさい
マスター」
「・・・・・ん
おやす・・み・・・」

  
  夢現の声と、髪に触れる掌の気配を抱いて。
  何ものにも追われぬ、ひとときの安息の場所へ。







【月●廃墟】さんちのBlog掲載文に付記されていた、『同居前の時期
に、バリーとの“食事”後に思い詰めたレイフロがチャーリーに会い
にいったけど冷たくあしらわれてたら』的な思いつきメモを見て、そ
ういえばどうなるんだろう・・とぼんやり考えてみたところ。
『バリーとの“食事”後で本気で沈んでいる』以外原型を留めていな
いネタ反転したものが・・・・あれ?
ある意味でgpの某場面の別.verのような違うよーな。

とりあえず諸々スミマセン;;orz

メモ寄りに改めて考え直してみると
「訪ねていったが機嫌が悪いチャーリーの言動に上手く応対出来なくて、
更に機嫌を損ねてはたき出されて屋根の上とかでしょげてる」
とかぶきっちょでダサかわいいかも?(ってまたボケっぷりに・・;)


題名のsheepは「羊が一匹・・」と生贄のを掛けてみたり。
こっそり、チャーリー=犬でshepherd(シェパード=羊飼い。牧羊犬で
羊を護るもののイメージ)だったりも・w・
(キリストは自身が羊(人の子)とも良き羊飼い(導くもの)とも称される
そう)

羊の数え歌は「英語だとsleepと似ているので(当人が)唱えると睡眠
導入呼吸に」「田舎の風景を想像して落ち着く」という説らしい??
のですがどちらかといって暗示の類のようなので、チャーリーに数
をカウントしてみて貰いました(笑)。


20120226w_up/0312:



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