日合わせで思いついた即席文なのでひたすら荒いでslllorzlll
明確にチャリレイでございます。ご留意下さい。
まあ、ほぼぼけぼのしてるだけですが。































「Trick or treat!」
折角の楽しいイベント日だったというのに、もう日付が変わりそうな時刻
まで作業机に張り付いて仕事をしているクリスの首に後ろから飛び付いて
抱え込む。
・・・何だよもう〜。
教会の婦人会の前準備の手伝いで疲れたからって、家に訪ねてくる子供達
の相手を俺にばっかり任せて。「適任でしょう?」の一言だけで用意した
菓子の山を押し付けてそれっきりなんて。
まあ、凝った仮装も色々見れたし、知り合いとお菓子の交換してみたり、
レイフェル付きでやってきたチェリルがお手製のスパイスの効いた南瓜ク
ッキーとアップルジンジャーキャンディーをお裾分けしてくれたり、退屈
はしなかったけど・・。
「・・・だから、作業中は急に触らないで下さいと・・・・・」
ふと、言い掛けたそれが途切れて。
クリスの手が、俺の腕、というか着ている物を確かめるように撫でる。
「随分いい毛皮・・ですね。
これ何の格好ですか? ・・・熊?」
「ブ〜ッ!
ノンノン、こぉの三角の耳と尖った口のフードを無視するなよっ」
まあ、抱え込んでるから見られないわけだが。
腕を緩めると、クリスは振り向いて指摘された部分を眺めた。
「・・・・犬ですか?」
フードの上から頭を撫でられた。手触りが気に入ったのか?
「ちがーう!
う・る・ふ! 狼!」
ぶうぶうと主張して、背後のふさふさの尻尾も持ち上げてみせる。
白に黒と茶が混じったような毛並みで、そこそこリアルな顔に造ってある
んだけどなぁ・・。結構皆にも犬・犬と言われた。ちぇっ。
「“ライカンスロープ”ですね」
フードの毛皮を撫でていた手が移って、犬にするように顎下を擽る。
「あはは、こら、だから犬じゃないって・・
・・・っと」
片腕で抱え寄せられて、丁寧に指先で顎を軽く掴まれた。
「・・Trick or treat?」
「・・・・。
何だ、さっきのにも返事をしてない癖に。
おまえが訊くの?」
文句の口調で言ってはみたけれど、優しい腕と眼差しに悪い気はしない。
少し肩を竦めて、着ぐるみの両手を広げてみせる。
「・・・お菓子は向こうに色々あるけど。
今の俺は空手(からて)、だな。
・・・・・悪戯、するか?」
「・・・ええ」
吐息が重ねられて、クリスの匂いに包まれる。
他愛ない日常の、こんな瞬間がひどく幸せで時折今でも夢のような思いに
とらわれることがある。
でも、何度でも本当なのだと確かめて、信じさせてくれるから。
「・・・・。
で、俺のほうの返事は?」
顔を離して尋ねると。
悪戯し返させてくれると思ったのだが、クリスは澄ました顔で真面目に、
「いいえ」
と答えた。
・・・・・ええー。
「なんだよ。
じゃ、なんかくれるのか?」
見たところ、特にそれらしいものも無し。この近くにそんな匂いもしない
んだが・・。
くん、とハナを鳴らした俺に、クリスは小さく可笑しそうに笑うと、椅子
から立ち上がって俺を促すとキッチンに向かった。


 ついさっきまで俺が居たキッチンは卓上に点けっ放しの小型TVと、そ
ばに本が数冊重ねられ。籠に放り込まれたり皿に載せられた種々の菓子、
飲み掛けの甘いスパイスワインのグラスが、黒地に金と銀で蝙蝠と月と南
瓜頭の案山子を象ったシルエット柄のテーブルクロスの上に載っている。
クリスは、暫く前に買ったばかりの小さな冷蔵庫のほうに向かうと扉を開
けて何かを取り出した。
「・・・これです。
どうぞ?」
それは、透明な硝子の器に入れて固められている深紅色の透き通ったもの
だった。ゼリー、だよな。
「チェリルたちにも味を確かめて貰ったので、悪くないと思いますが・・」
「・・・あ!」
チェリルが来た時持っていた手提げ袋が、帰る時余った菓子をあれこれ持
ってってもらったけど、その前に入っていた容積となんか合わないなと・
・・。
・・・・何時かのバレンタインの時の逆にクリスがあっちの台所を借りて、
更に預かって貰っていて、俺が気付かないようにチェリルが隙を見て入れ
てったんだな・・・。
酒と果物くらいしか入っていないから、今日はそうそう開ける機会も無か
ったんだ。
「・・・。
綺麗な色だな」
最近になって、自分で食べなくても役に立つ機会はあると調理を真面目に
考え直したらしいクリスは、時折チェリル(とついでのレイフェル)や俺に“お
やつ”を作ったりミネア用に食事を作ってみたりすることがある。
元々手先は器用で几帳面なので、レシピに従って作って上手く出来上がる
と結構楽しいようだ。
自分の分も出して、両方にコースターを敷いて銀色のスプーンを添える。
テーブルに伏せるようにして硝子越しの色合いをしげしげと眺めていた俺
に、冷たいうちに、と笑って向かいの席についたクリスは先にスプーンを
手に取った。
何だか随分ちゃんとした“デザート”みたいで姿勢を正したくなり。フードを
後ろに避けて手袋になっている両手を外してから、スプーンを取って一匙
掬った。
ワインの風味が、ひんやりと滑らかな感触と共に口の中で柔らかく崩れる。
「・・・・・美味(うま)いかも」
熱心に口に運ぶ俺を、クリスは片肘で頬杖をついて満足そうに眺めている。
「・・仕事はもう直ぐ片付きます。
そうしたら・・・ええと明日と明後日は空きですから、古習に倣ってソウ
ル・ケーキとワインを彷徨うものたちにお裾分けしながら、二人でのんび
りしませんか?」
“soul cake”というのは干葡萄の入った四角いパンで、“trick or treat”
の由来になったといわれている11月2日の“死者の日”にキリスト教徒がパ
ンを貰う代わりに親族の霊のために祈る約束をするという慣わしで、更に
その前にはハロウィンの元になったケルトのサウィン祭の徘徊する霊のた
めに食べ物とワインを残す風習があった。
「・・・・それで、俺に“仕事”を押し付けたのかよ」
全く、と拗ねた風に言ってみせると、済みませんと申し訳なさそうに頬を
指先でかいて苦笑した。
・・・・・ま、そんな理由ならこっちにも不満なんてこれっぽっちも無い
んだけどな。
「・・・ってことは、パンも手作りか?」
「粉を篩(ふる)うところからやりましたよ」
やっぱり。
「・・・・・。
前、フランクの店のピンチヒッターした時に。
おまえ、こんなのもありだったのかな、みたいなこと言ってたけどさ。
・・・この調子じゃ、ぜーったい、パンとソーセージ手作りのこだわった
やつとかになるんじゃないか?」
くくっと笑ってからかうように尋ねると、思い出すようにしてから、ぐ、
と詰まったように額を抑えた。
「・・・自分でも想像出来てしまうので嫌ですね。
まあ、同じものを商いとして作り続けるのは私には向いていないというの
が幸いと言うか・・ですが」
笑って返すとクリスはふと、音量を低めてあったTVの画面に目を遣った。
「・・・・もう、日が変わりましたね。
ケルトの暦では“新年”ですか」
「日没が日の始まりだから、もう変わっているというのが本当なんだろう
けどな。ま、とりあえず“時の変わり目に”乾杯!」
最後の一匙を掬って掲げてみせると、
「“時の繋ぎ目に”」
同じ仕草と笑顔が、俺だけのために返された。








[mandarin orange]よりも後の話のつもりで書きました。
ハロウィン関連はうぃきぺ頼みですのでテキトーにそれっぽく。
vtの件は[White Rabbit]。
フランクの店、の件は音源インキュ同収のpart-time-jobより。

お礼になってないやっつけ仕事ですが、る様に。
毎度の戯言へのおつきあいと、数々の話とキーワードに感謝を込めて!


そして此処を見て下さったかたにも。
どうぞ、良い日をお過ごし下さいますように。

20111031:



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