■これは「かんじのいい○天使」の時のフォロー文の類・・。 豊穣と同じでコレも殆どアクション補足ばかりで貼れるようなモノが無い・・・。 「駄」天使ギンガの相方のオリキャラ、サキの設定用に書いてみた遭遇篇用文から抜粋。 |
・ギンガとサキ・ 淡く黄色味がかった外壁が微妙な陰影を帚 いている。半月に少しばかり足した位の大き さの月に照らされてそのマンションは夜の中 に静かに佇んでいた。新築という程ではない がまだ二年になるかならずやという位だろう。 やや大きくフォルム的にも一般画一的ではな い形も周囲と違和感なく落ち着いている。 その上階、屋上から二段下の階のドアが一 つ開きすぐに閉まった。人影が階段へ向かう。 屋上とその階の間の階は貯水タンクや換気類 の収納管理室になっており普段は立ち入る事 は出来ない。踊り場の壁に張り付いている閉 じた濃黄色の大きな扉の横を擦り抜け上へ上 がる。突き当たりの広目の踊り場に立ち、矢 張り個宅のドアより大きなレモン色の扉を開 くとその影は上を見上げた。 空に架かる、何時もより澄んだ光源。ひん やりとしたかそかな波動。 月に照らされた屋上の小さな庭園は、何処 か絵本の風景のようにも一瞬思えた。 はぁ、と深く息をついて影は屋上に立ち、 そっとドアを閉めた。見回すと建物周辺の木 々の梢がひょこひょこと見える。薄く色の掛 かった丸眼鏡を外すと琥珀の瞳が透ける。胸 ポケットに入れ、緑の生き物の間を歩き出し た。 此処は夏場の建物の保冷効果も考えて造ら れた空中庭園なのだ。あと一ヵ所中階にもう 少しきちんと庭の形にしてあるものがあった が、割と無作為な感じが小さな林の様で屋上 の方が好きだった。きちんと定期的に手入れ はされているが、どことなく呑気(?)な雰 囲気がある。影は一回りしてから、ふと立ち 止まった。 低木の茂みの中に、何か白い物が見えた気 がしたのだ。 「?」 チラシか、住人か又は付近の洗濯物でも飛ん で来てるのか、とよくよく見直すとそれは布 や紙では無かった。白っぽい毛並みが僅かば かり密に茂った葉の間からはみ出ている。何 となくフェイクファーの類いではなさそうだ った。 生き物の、気配。 階下の家のペルシャかとも思ったが色味が違 う様だ。 (どっかのネコか、他の動物か) 一寸思案してから影は手を伸ばして無造作に 見える程あっさり‘ソレ’を引張り出した。 「え…?」 掴んだ時布とその中身の感触があって猫を 仮想定していた触感が異を唱えた。とはいえ 既にそれは遅かったので躊躇せず出してしま ったのだが。 「…………」 ソレ、はどう見てもまだ小児…いや幼児と呼 べど差し支えないだろう人間の子供だった。 毛並み、に見えたのは質の良さげな銀の髪。 瞳は閉じているーーーどうやら熟睡している 様だったーーーので色は判らない。どうした のか全身のあちこち煤にまみれて薄汚れてい るが、特に怪我やその他の不審な点は見当た らなかった。…ただ一点を除けば。 「んー…?あれ」 「あ」 両手で持って対象をほけっと眺めていた影は、 丁度目を覚ました子供と真っ向から見合う形 となった。子供の瞳は明るい緑をしていた。 「………。えー、と。おにーさん、だれ?」 まだ少々寝惚けているのかもしれないが、何 の屈託もなさげに子供は影ーーまだ若い青年 の瞳を見上げた。 「…あ、オレ?オレは…サキ。茶杞忝韋(さき・ てんい)だ。ーーーおまえ、は?」 答えながら慌てて抱え直し尋ね返した。 「オレ?……オレは、ギンガ」 「銀に大きい川の銀河?」 「うん、多分」 子供は彼の腕の中で機嫌良さげににっこりし た。夜中にこんなとこで眠っていたり顔は勿 論全身煤けてはいるが、ごく普通の子供に見 えた。 ーーーーー但し…その背に一対の、本物の “翼”が存在しているという事を除いては…。 |
■フォロー文から抜粋。 ランクアップすると一気に外見ごと成長するのでこんなかんじかなーと思って 書いてみた日常混じりの駄文。 |
「………ところで」 サキが窓際のギンガを見遣る。 「日本全国津々浦々で記憶限定部分欠落してるらし いが、オレの記憶は変動してないぞ。どうしてだ?」 「…オレがいるからだろ?」 ギンガが顔だけ振り向いて笑う。 「サキの記憶が欠損したら下手すりゃオレに関連す るこれまでの遣り取りまで飛んじゃうじゃないか。 最低でも会話の辻褄が合わなくなる」 「成程、ちび天使でもそれくらいの効力はあるのか。 まあ、オレら一人や二人漏らしたとこであっちは痛 くも痒くもないからな」 「反天使なせいもあるかもしんないけどね」 ギンガはもう一度笑った。 ********* 「………んー。おーい、ギンガ一寸牛乳買いに行 ってくんねーか。…ってあれ?まだ起きてなかった か」 フレンチトーストを作りかけて牛乳を切らしてしま った事に気付いたサキが居候を呼ぶ。しかし大抵サ キが起きてうろうろしていると気配で起きて来る彼 が珍しく見当たらなかった。 「おーい」 彼が寝床にしている大きめの藤籠を見に行くとそこ にはいなかった。んじゃ、と居間へ行ってみるとカ ーペットの上に毛布の固まりがあった。二枚が重な っているので形が不規則だ。どっちが頭か判らない。 「ギンガくーん。お使いいってきてちょ」 固まりに声を掛けるともそもそと動いて銀色の髪が 覗いた。でも反応が鈍い。寝起きのよい彼には滅多 にない事だ。 「どーした?風邪でも引いたか?」 寝惚けてるってコトも…とは思いつつ毛布の端を引 いて顔の辺りを覗いた。 「…………。ギンガ?」 一瞬、不思議な気分に囚われた。時間がずっとずっ と過ぎた様な。もう何年もずっとこうしてこの居候 と暮らしていた様な。 ーーーでも、そういう訳ではないのだ。ふっと意 識を引き戻して、サキはまだ目を閉じたままの頬を つついた。 「ギンガ。起きろ」 「ん」 ぱちり、と今度こそ緑葉の瞳が開いた。二、三度舜 くとサキを認めて真っ直ぐ見詰めた。 「あれ?オレ、今日は起きなかった?」 支障無い動作で半身を起こすと、ふとギンガは訝し げな表情をした。 「…サキ?あれ?…」 「………ニブい奴だなぁ」 具合悪くはなさそうなのでサキはほっとして破顔し つつ呼び掛けた。 「…お前、大きくなってんだよ」 「え?」 やっと自分の違和感の正体ーーー視点の高さやその 他諸々の諸条件ーーーを把握してギンガは自身をあ ちこち見渡した。 彼は、少年になっていた。 寝巻き代りのサキのTシャツがまだ少し大きめだ が普通に着られるサイズになっている。基本視点が 一気に上がったので少々慣れないが、取り合えず着 られそうな上下を借りてギンガは着替えた。 「ところで、あの件どうする?纏まったか?」 結局自分で買い物に行ったサキが牛乳をとぽとぽ ボウルに注ぎながら尋ねた。ギンガはフライパンを 手にしたまま、 「んー…。内容はいいとして、手段だよ」 と答えた。 「…だな」 サキは簡潔に答えて砂糖を少しばかり放り込んだ。 |