■これは「豊穣の雨」の時にフォロー文等として書いた駄文の類です。

  
 家人のPC:シア用に書いたフォロー文二件です(これはアクション用の状況説明文)。
  豊穣ではアクション用フォロー文(プラリア)に書いたものは結構RA中に採用して貰えました。
  自分用関連のものは・・・直接アクション補足なものが多くて貼るようなもんが無かった(それ単品だと通じない;)。





真っ暗だった。
(いつからこうなってる?)
気が付いた時からだ。
(私はどうしてここにいる)
思考の反響がピシリと跳ね返って来た。
(ーーー動けない?)
せまかった。
(どういうことだ?)
順に記憶を手繰る。
(…‥私は…)

暗黒の力に捕らわれて、シアの意志は封じ
込められた。荷物袋の中に突っ込まれていた
筈の「カレーの御守り」は、何時の間にかシ
アの首に掛けられている。
トラスは姿が見えなかった。何処へ行った
のだろう。
シアは何も喋らない。その口は結ばれた儘、
足取りは止まる事はなかったが、目的の場所
がある様でもなかった。 ただ、進んでゆく。

(思い出したぞ。アレのせいだ。あの光、とペ
ンダント…)
シアは辺りを見回した。
周囲は相変わらず闇に閉ざされていたが目が慣
れるのと思考が確かになっていくのに併せて、自
身が発する感情の波動の微かな光が増して少しだ
け視界を助けてくれる。
シアは黒く透き通った硝子質の壁に閉じ込めら
れていた。
ふと意識を締めつける感覚。
「何だーーーーーーー何で…」
自分の意志で自分の行動を決定する事が出来な
い。外に感じる自分の身体は何も考えていないか
の様にただ歩いていた。
それに…
「“光の人”を倒せ、だと? “闇の人”?
それがどうした。私は、私自身と私の信じるもの
にしか従わない」
しかしその力は強かった。簡単には逆らえない強
制力を持っていた。
でも…
『自分の行動は自分で決め、自身で責任をとり
なさい? 自由に対する、それが権利と義務な
のだから、よ』
『自分自身に、常に問いなさい』
そう育てられ、それが自身の身上でもあるシア
にとって、今のこの状況は何よりも許し難い苦痛
だった。
(確かに私もうかつだったがな…。)
水の瞳が壁を見つめた。
(それでも…‥)

透明な黒色の壁の向こうには、少し離れて“シ
ア”が背を向けて立っていた。
その顔が振り向く。…黒い肌に無表情な顔。それ
以外、寸分たがわぬ姿。
(私は…自身の行動に責任を取らねばならない)
帰らなければ、元に戻るのだ。ーー自身の愛する
ものたちの為に、自分を好きでいてくれるものた
ちの為に。 何しろ、こんなていたらくでは両親
と兄二人、それと優しい従兄弟に顔向け出来ない
ではないか…! そうして、小さな親友にも。
(だから決してーーー)
もう一人の“シア”の口の両端がすうっと持ち
上がり、奇妙な笑みの形を作った。
意志はない。即席の仮人格である形代。あるとす
れば…それは“使命”だけ。

「…‥負ける訳には、行かない!」
シアの感情の炎が閃く。
その熱量に黒い壁はチリチリと音を立てた。

19980712:


↑趣味で料理(カレー作成アクション)をやっていたため、実は闇神の領域だったカレー神殿のお守りによって“闇の人”化したシア。
トラスがジェンから“鍵”という特殊アイテムを貰ってきて「“光の人”となる手段(心の旅)で相殺を試みる」というアクション用の
フォロー文。全文RAに載ってます。
結果、光でも闇でもない「2枚の幻燈を持つ者」というモノが追加されました(笑)。


↓他のPC(前世が闇神設定)の干渉により魔術師ティフェルの遺した同居物の片方(ポケットドラゴン(仮)のユグ)が“前世は闇
神狩りの竜”(注)ということになってまづい状態になっていたため、再び心の旅で説得を試みた際のアクションフォロー文。
長すぎ、ですが結構な分量載せて戴きました。結果、ユグは本来の記憶を取り戻し、“世界樹の黄金の守護竜”として味方に復帰。

注:神狩りの竜=闇と光の神々が争っていた時代に召還された、神を倒せる力を持つ強力な竜。



呼び掛ける。
‘鍵’は精神の殻を透かしてその内側へと
声を届ける事が出来る。幾重にもなる層を
越えて。
外郭と外郭を繋ぎ、その入口へ他者の意識
を到らせることも。そこより深層へと降り
てゆく事も出来るかもしれない。
精神は形なきがゆえに。いまこの瞬間と一
瞬後の自分が“同じ”でない様に。
ーーーー精神は記録する。
過去の記憶を。現在の風景を。


「リュン、ユグに話掛けてみてくれ。今
の状態では君くらいしか思いつかなくて」
頷いたリュンと、ついてくと云うトラスを
連れて呼び掛ける。
『ユグ。ーーーきこえるか?』
遠くて近しい感覚。
物理的な距離も概念での時間も無いから、
それに間があったと感じたのも本当はほん
の一瞬にも満たない時間だったかもしれな
い。
                
『………』

小さな黒い竜はぐるるる、と鼻面を仰のけ
て一人と二匹を睥睨した。
『ユグ、…忘れちゃったの?』
リュンが哀しそうに首を傾げた。トラスと
シアは変わる前の状態を見た事がなかった
が、リュンの記憶から元の姿を知る。
『何用だ、この闇の神狩りの竜に』
冷徹な視線が空間一杯を支配するかと思わ
れた程の気配を伴ってひたと据えられた。
トラスは一瞬左右色違いの目をすがめたが
二本の尾を軽く打ち振るとそれを見返した。
シアはすう、と小さく息を吸って吐く。動
じた様子はないが気配の質が少し変わる。
リュンが数歩前に出て、一生懸命な様子で
話掛ける。
『ユグ、どうして?一緒にいたじゃない。
一緒に待ってた。ティフェルが本当は愛し
ていたかったこの世とひとの敵にはならな
い…ならない筈だったじゃない。どうして、
いまの君はそうじゃないの』
一呼吸置いてユグは答えた。
『…我は闇の竜。その使命、再び蘇っただ
けのことよ』
瞑目して開かれたと同時に叩き付けられた
殺気と威圧感のないまぜになった様なもの
にリュンは吹き飛ばされそうになった。ト
ラスが寄ろうとしたが目顔で制される。
ごく普通の猫の大きさの上に、幻の様に鮮
やかな姿が現れた。
『………ユグ。無駄口叩く為にこんなとこ
まで来た訳じゃない。おまえとは同じ位置
にいた。おまえが自身の意思でそうしてい
るのなら私を裏切るということか。
今一度答えて貰おうか』
本体であるリュンクスのオーラと普段の気
配が融合し、リュンは烈風の様な威圧を撥
ね除けて姿勢を正した。
『…………。知らぬな。今の我には一片の
意味も見出せん』
黒い竜は爬虫類独特の仕種で首を持ち上げ
た。その背後からうっそりと顎を見せた漆
黒が小山の様に影を落とす。重なった色が
明確になった時、目前に在るのは巨大な竜
だった。酷薄な笑みとでもいう感情が相対
する三者に圧力となって振りかかる。
でも。
遥かに小さく見える彼らは逃げ出したり膝
を折ったりしなかった。
【ユグ、自身で答えよ】
深い響きの声が漣のように、一つだけ打ち
鳴らされた鐘のように在る。
黒竜は戸惑ったかの風に睨つけた。
“こいつらはなんだ?如何にして我に対す
るのだ”
「聞くつもりは…ないのだろう?」
シアの水色の瞳が向く。
「‘おまえ’はな」
『ーー何?』

水を打った様な空気が隅々まで満ちた。

とん、と軽い音がした。
小さな竜が座り込んでいた。
ふるる!と頭を振って彼は立ち上がる。
「ユグ」
真正面に居る人物が呼ぶ。
『……。誰』
「シア」
『ふうん』
ユグは首を傾げてからもう一度問う。
『何?』
彼の姿は小さかったが、形態は闇竜だっ
た。
「ーーリュン」
シアの声と同時にリュンクスが空間に現れ
一歩、歩み出た。
『ユグ、もう一度聞きたい。今の状態はお
まえ自身の意思によるものかどうか』
…きちんと座ったその姿が‘猫’に戻る。
『ユグ』
『…………。前の時、闇の神狩りの竜だっ
たのは確からしい。だから、その使命は、
強い』
ふい、と顔を背けて彼は言った。
「だが、それが今の君に何の価値がある?」
『価値?』
シアの声にユグが振り向いた。
「勿論、一般論などではなく、君にとって」
『ユグにとっての価値…。守る意思がある
かどうか。そうしたいと思うか。 大切か
どうか、だよ』
リュンが静かに囁いた。
「前世は前世だがそれ以上でもそれ以下で
もない。今の世の姿も、本物。
本当の姿とは、他者
の一存で決めるもので
はない。君自身がそうありたいと思う心が
決める」
トラスがシアの肩に降りてきた。
「君の意思は、どうしたい?」
リュンは瞬いて小さな竜を見た。
『きみが、今どうしたいの?ユグ。ただ、
その答えを聞きにきたの』
『コタエ…、答え?』
ユグはうろんげな表情をする。それはそ
うだろう。如何に前世があるとはいえ、ユ
グ自身が望んで闇竜に覚醒した訳ではない。
御守りによって強制的に闇の人になったの
と余り大差はないともいえる。

『こたえ…ユグの………  シメイではな
く望むのは…願う、のは…?』
びびびび、とユグの輪郭がブレる。
強大な黒竜・小さな闇竜 そしてポケッ
トドラゴン。三つのヴィジョン。
            
過去でもない。外見でもない。
君のホントウの魂の居場所はどこ?
            
『ユグは、“此処”だよ。
ーーーオイラ、ここにいるんだぞ』
一度完全に見えなくなった姿がもう一度現
れた。
リュンは、目を見開いて、それから真っ直
ぐ向かって笑った。
よく見馴れた、その瞳に向かって。
            
心、は何処にある?
それは、いまだ誰も正確には答える事
の出来ない事象。
意思と感情。
魂は精神と心を併せ持つも
のだろう。
そして、しばしば心は加速する。
精神を追い越し、未来の場所へ。


もう一度、自分自身を選び取る為に。
その時こそ、
意思はその手に宿っているか?

19981206S2N07MAN:


 ■ほんとはタテ打ちB6ニ段組用なんでなんか行の配分がヘンですね;
  でもヘタに横に長く調整してみたらやっぱりバランス悪いので止めときました・・・;

  私設交流紙「火竜の鱗亭」付属:「水竜の滴亭」用原稿より一部。火竜は投稿原稿式・水竜はフィールド参加型の簡易話でした。
  これは水竜NPC二名のみの場面。



 
カウンターの左端で一休みしていたラー
テルはふとセツに尋かれた事を思い出した。
「…どうした?」
突如耳元で声がしてラーテルは視線を振り
向けた。セツが作った幾房もの飾り編みがぶ
つかって軽い音をたてる。
「ーーーーヌシ」
横のスツールに、カウンターに背を向けて座
っていたのは透き通る程の真っ青な髪を流し
ているヌシだった。彼の色彩の変動には一応
慣れたつもりだったのだが、普段水色に近い
青から淡目や白、濃くてくすみ青だったから、
その鮮やかさは目を射た。
「何故尋かぬ?確証がないからか?」
青い紗幕の内側にある顔は相変わらず見えな
かったが、僅かに透けて見えた口元と声音は
笑みを浮かべている様だった。
「いえ…。私がしている認識を此処で基準に
してよいものかという、基本的な段階から問
題になってしまうので」
ラーテルのやや丁重な返答にヌシはくすりと
笑った。
「それに…要らぬものかも分からない。私が
ただ知りたいだけなら、わからなくてもよい
ことかも知れないからです」
「そうだな…」
ヌシは一度目を閉じた様だった。そして再び
聞き手の方へ顔を向ける。ラーテルはその見
えない貌を見返した。墨の瞳は沈んだ黒銀の
彩を帯びている。
「もう少し、私が此処にいてもよいのなら。
今は、考えていてみたいのです…‥」
返答を受けて青い色彩は一つ、頷いた。そし
て色味が矢車草のブルーに変わる。
「聞きたければ答えよう。まだ答えを探して
みたいのなら我はまだ暫し沈黙する」
春の空気の様に柔らかい気配が一瞬ラーテル
の脇を掠めて、その一瞬後には彼は消えてい
た。


戻。