妄想ifENDというかエピローグ風味。
墓ネタ・20年後辺り想定

このキーワードでまずいと思ったかたは閲覧要注意






























 広い墓地の外れの一角。
まだそれほど古くはない白い墓石の上に、木漏れ日が揺れている。
草地の上に少しだけ盛り上がっている滑らかな長方形の盤面。
シンプルだけど素っ気無いという程ではなく、革表紙の本の装丁を思
わせる凹凸と瀟洒な飾り枠に縁取られた中には、綺麗な書体で。
まるで題名であるかのように、言葉が一つ。
下のほうに名前が二つ、控えめに刻まれていた。


“ 

  唯一の愛の名残を此処に  







  Charles= J =Chrishunds
     Johnny・Rayflo   
                ”


緑の草の上に屈んで、白の上にそっと手土産を置く。
根元を滴のような硝子飾りで重し代わりに留めた、繊細な乳白色の
花弁と明るい黄緑の茎と葉。
「・・・前のより、上手く出来ましたよ。
次は何色の花がいいでしょう?」
子供の頃のように、目の前の高い位置で彼らが賑やかに遣り取りを
する声が聴こえるような気がする。

 『なぁなぁ、チェリル〜
 今度は普通の花じゃなくてさ、これ!
 この本に載ってるこういうのほしい!』
 『・・・日本語の絵本ですか?
 ・・・・・・って、マスター。
 これ、造ってもらってどこに飾るつもりなんですか・・』
 『えー? そりゃー犬の顔の花だしぃ。
 お・ま・えの部屋の彩りに♪
 かーわいぃだろ?v あ、こっちのがいいかな』
 『自分の部屋に飾って下さいっっ!!
 これは、ファンシーというかシュールというか・・・』

遠い記憶の断片と混ざった、夢のように。
「・・・“此処”は二人の場所ですから我儘はダメですよ、
レイフロさん。
・・フォックスフェイスにでもしましょうか」
狐の頭のような形状の黄色い実を思い浮かべて、今度はあれにして
みようかと思う。犬ではない代わりに色でも変えてみようか。

今日は天気がいいけれど他に墓参をする人影も無く、とても静かだ。
さわさわと、夏の気配が近付く風が柔らかに吹き抜けてゆく。
「・・・・・・。
マスター。
そろそろレイフロさんと同じ“年頃”になってしまいましたよ、私」

 チェリーさんの“マスター”ではなく。
私の“マスター”の墓は、無い。
二人が同じ時に亡くなった後、レイフロさんに一番近しく造られ、個と
してあってなお存在自体が強く結び付けられていた双子のような彼
女は程無く、消えてしまった。
一緒に過ごしていた頃に、
『私は、墓はほしくないな〜
チェリルとずっと一緒に居たいし、覚えていて貰えればいいんだから』
と戯言(ざれごと)に紛れて言っていたから、だから、造らなかった。
・・・・・・・。
こういう時、墓があれば八つ当たりも出来るのにと溜息をつく。
もう、そうそう鎌を気軽に振り翳したりはしませんけどね。
・・・素手でも強いんですよ、私。
脳裏に涙目のマスターが浮かんで、ふん、と口を尖らせる。
・・・・・・・・嫌がらせです。
私は絶対、絶対、可愛いおばあちゃんになるまで生きて。
それから、この二人のお墓みたいにきっちり二人分の名前を刻むよう
に遺言して。
そうして、何時か夜だけの日々にも飽くか、運命が訪れるまで。
誰か別のいいひとを見付けたりしやしないかと、たっぷりやきもきさ
せてから。
・・・・・・・・そうしたら。
貴方のところへ行ってあげます、マスター・・・。
それまで、反省、してて、くださ・・・っ



***



 「・・・チェリル、そろそろ帰りましょう。
買物をするのでしょう?」
もう耳慣れた静かな声が背後からそっと掛けられる。
残っていた涙を拭って、振り返った。
「・・あ! もうこんな時間」
手提げに付けていた時計を見て、慌てて立ち上がってスカートを払う。
「今日の夕飯は私が作るんだったよね。
待たせちゃってゴメンなさい。
ミネアは先に帰ってていいよ?」
「いえ、ご一緒します。
食材を買い足しておいても構いませんよね」
私と同居を始めてからは目立つからとメイド姿は止めているが。
相変わらずのポーカーフェイスで、ぴら、と上着のポケットから取り出
して広げて見せたのは、食料品メインの新しい雑貨店の開店セール
の広告。
「なになに・・・
あ、配達もしてくれるんだ。
色々ありそうだし・・いいわね。行きましょう」
「はい」
私が広告に記された場所を確認するのを待ってポケットに戻したミネ
アは、一足先に踵を返して草の間に伸びる石畳の道を歩いて行く。
その背を見送ってから、もう一度だけ振り返る。


 「・・・レイフロさん、チェリーさん。
・・・・・マスター。
またね」




  また来る日まで。
  さよなら、愛しい追憶の日々。











ふと思いついたifENDというかエピローグっぽい何か。
追憶END。
不幸ではない死亡ENDならこんなんもありかと思ったんだけど。
当人が涙目になりながら書いたので許してくださいゴメンなさいlllorzlll

英字表記名はCDブックレット参照。
墓石の言葉を英語で書きたいがわからないorz
Bの御方の呪縛は〆前に解除済み・・で、本編現在から20年後くらいの
想定です。
二人の死因は各自脳内補完Plz


犬花ネタは「かいぞくふとっちょジェイク」から(家の本は行方不明で絶版
本;)。宝の隠し場所を忘れた海賊一味が色々な島を探すのですが、そ
の中に犬の頭(そのまんま)の花が数種類あるのが出てくるのですよ・w・

クリス似ならチェリルも手先が器用かもな〜と思って。
紙製の造花です。

20110907:








蛇足


「長く時を共に出来ることだけが幸福ではない」と多分そういう部分もあるんじゃないのかな、
と思っているので(十七章で、バリーの偽神父レイフロに、レイフロが「命を手放さないように
不自然に足掻こうとするから苦しみを負うのだ」みたいな(でいいんだろうか?)自戒のような
自嘲のようなフレーズを唱えていたし・・)、こうなりました。
それでも本編の分では色々負い過ぎた上に“一緒に”居るのがまだ短すぎるので、もう少し心
配なく長く暮らした後にこの世を立ち去ってほしい。

メインメンバーの中で、あのふたりは(ミネアも多分結構)「若い」ので。もしも取り残されること
があったら想い出を共有出来る同士、助けあえるのではないかと(ミネアは人間にトラウマ
持ちですがチェリルなら)。
形的にはミネアが主を変えたように見えるけど、主従ではなく、友人で仲間であり相棒っぽい
感じを。


多分、現状で想定出来る「最BAD?」は、契約解除でレイフロの存在が滅び、彼自身に直接
繋がる者たち(レイフェル・アルフォード・クローンたち)が一気に総員消滅してしまうパターン
辺りかな、と。
(生手で一部分について言及されていた点を逆に考えると・・で。)
チャーリーはレイフロと契約してるとはいえ別個体なので変わりなくそのままか、“真祖”が消
えたことでまさかの人間に戻るか(ネタ振られたままの、パオレのアレが気になっているんです
よ・・)。
・・・まあ、これは無いだろうと思いますがネタとしては出てくる可能性はあるんだろうか。



妄想のおまけ。

本篇については〆想定出来ないのですが。
ベタ要素として思いつくのは。

Bの御方の呪縛解除(切るか切られるか)
→レイフロが“人間”状態に戻ってしまうため死に掛ける→チャーリーに
「・・・もう一度、選ぶ気があるのなら・・・・・『俺はまだ、おまえの傍に居たい』」
→主隷逆転(レイフロがチャーリーにからかい含みに真面目に「マスター」と
呼び掛けてくれたら萌えというか燃え)→でも結局何時も通り(笑)

とかね。Vassalord.(「vassal」+「lord」)なので・w・

090
8:




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