七章で伏せられている部分を推測してみた断片。
閲覧注意。




























 床に調理ナイフで重ねて縫い止められた両手が痛む。
きつく目を閉じて意識を傷の痛みに向かわせようと努める。
薄く漂う、嗅ぎ慣れた自分の血の匂い。

 『・・・ったく
 だったら手位刺してみろよ
 大根役者め。』

少しだけ口惜しい気分で優しい捕食者に投げた自分の声が、脳裏に蘇る。
思い出すな、思い出すな、今はダメだ。
祈るように頭の中で繰り返す、それを無にするように。
 布手袋の指が、肌を辿った。
聴き慣れた声そっくりのものが間近で音になる。
『・・・“マスター”』






 繰り返される自分への悪夢のような罰。
永遠の生贄のプロメテウスのように啄ばまれることにいつしか諦めを覚
えて誤魔化してきたのに。
愛するものへ与える者になれるのは全く違っていて、贖罪でありつつも
本当は嬉しかった。その時だけは傍に居られる。
あいつに殺されるならいっそ救いだと。
あいつが望むなら、いつかそうしようと思っていたのに。
あの時素直に涙を流して俺の核である小さな蝙蝠を護る道を選択したあ
いつに、目覚めた俺を見たあの表情に。
・・・夢を見たくなった。
傍に居たかった。
 夜の内に現れた、幻のような白い子供。
綺麗な心、綺麗な笑顔。
暖かな小さな身体と手、幼い声。
闇に堕としたのは、他でもない俺だったけど。






「アディー?」
一連の動きが止まって身体が離れ、何時もの奴の声で呼ばれてついうろ
んげに漸く元に戻ったのかと反抗心のようなもので目を開いてしまった。
「・・・」
自分の迂闊さ加減を呪った。
『・・・・ふふ。
“マスター” 貴方をもっと、深く暴いてみたい。
私に、見せてください』
聴き慣れた声が、聴き慣れない響きで。
見覚えのある顔が、見覚えの無い、あってほしくない表情で、嗤う。
そして、生身の手の指先が長い爪に変化する。
それは、無造作に一閃された。
「・・・・・・・!!」
胸元と腹部の境目に傷が綺麗に線を描く。
流れ出す血をぴちゃりと舐め取り、満足そうに“知った顔”が嬉しそうに
無邪気に笑った。








七章「インキュバスは一度名を呼ぶ。」の場面
本編では伏せられていた部分を推測してみた文冒頭〜惨劇開始っぽい
落書きから断片的に抜粋lllorzlll


げんきょうのやいば。

例のコマでは明確に変わっているのは顔と輪郭ですが、おそらく全身。
手や耳を含む身体は多分生身.verか。
音源版ではたった一箇所ですが“声が変わる”のが音になっています。

後でレイフロが怒っていたのは、バリーにチャーリーの姿を使われたこと
とその事態を招いた自分、でいいのかな。彼にとってクリスは大事なきれ
いなものだし。

20110818:




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