今頃になってやっと無印の内容を大まかになんとか把握出来た(ような気がする)余波で出来た捏造断片。
双子のみ。宮牧未満。
電子の藻屑1mm手前につき何でもいいというかた向けですスミマセン(平身低頭);;











 そこへ彼を連れて行ったのは。
単なる話の流れで、唯の気紛れだった。

円錐の傘の付いた丸電球。
窓の無い真っ白い壁に造り付けの半円の堀棚が幾つか。
高脚台付きの洗面器と、白く塗られた鉄製の寝台の上には簡素な白い
寝具。
通風孔や金属製の扉も白い。
それしかない、やや古めかしい部屋だが、
「・・・結構可愛いお部屋なんですね」
と、牧野さんは小さく笑みを浮かべて無邪気に部屋の上部の半円のア
ーチを見上げている。
少し前に暫く不調だったため復調確認の検診に来ていた折で、診察室
から奥にそのままついて来たから。見慣れた黒衣に覆われていない白
い立襟のシャツの背は、今は無防備極まりない。
・・・・・・。
時折、貴方を見て色々と酷いことを夢想するのだと。
正直に洗い浚いぶち撒けたら貴方はどんな顔をするんだろう。
 半地下の此処へ案内してみたのは勿論気紛れだったが・・・。
ふと、魔がさした。

「・・・・。
牧野さん」
「・・はい?」
あ、すみませんぼーっとしてて、なんでしょうか、と、慌てて弁解し
ながら振り向いたのに、
「いえ・・。
一寸、前で掌を合わせて貰えますか?」
軽く自分の胸前で手を合わせる仕草を示すと、一旦きょとんとしてか
ら、あぁ、はい、と素直に従った。
普段よくする動作に近いから違和感を持たないんだろうな、と思いな
がらポケットを探ってコードを束ねる時に使うような短い留め帯を取
り出す。
軽く手を添えて、揃えられた彼の両の親指に巻き付けてきっちりと留
めると、流石に不思議そうにした。
「・・・・?
これも、何かの検診ですか?」
普通に“医者”だと思っている時は怯えないんだよな、このひとは。
わかっているようで、わかっていない。
腹立たしいような呆れたような気分で無造作に足を払うと、見事によ
ろけて寝台に当たって床に膝をつく。
「?! なに・・を」
状況が理解出来ないカオで体勢を立て直そうとして、自分の腕が上手
く動かせない状態であることにやっと気付いたらしい。
束ねてある親指を見詰めて、それからはっと傍で見下ろしている私の
顔を見上げた。
「説明、しましたよね。さっき。
此処は、不都合な人間を当人にも知らせず“取り合えず”“入院”さ
せておく予備の部屋だ、って」
「・・・え、だって。
冗談、だって・・言って」
顔からみるみる血の気が引いていくのが絵に描いたように判り易い。
「・・・“宮田”は嘘吐きじゃないと務まらないんですよ。
特別に、ね」
「・・え、で・・でも。
なんで、私・・ まだ・・・
それとも何か・・・」
混乱した様子で呟いている。
彼は子供の頃のとある一件以降、物事を失敗することを非常に恐れて
いる。何か自分に落ち度があったのかと必死で考えているんだろう。
頬に手を伸ばそうとすると、捕まえられると思ったのかびくんと肩が
跳ねてもう一度立ち上がろうとするが、寝台とこちらに挟まれて逃れ
られずに立ち竦む。
「・・・ぁ、・・」
落ち着いていれば前側で束ねた簡易帯なんて歯で引けば外せないこと
は無いが、基本的にトロい上に恐慌状態のこのひとには思い付かない
だろう。
肩に手を伸ばすと悪足掻きで壁のほうへ逃げようとするのを掴み、寝
台の上にうつ伏せに引き倒して脚裏を膝で押さえつけると、どうした
らいいのかわからない様子で怯えて微かに震えている。
黒衣が無いと気分的にも心もとないのかもしれない。
「・・おとなしくしてて下さい。 牧野さん」
姿勢を低めて耳元に声を落とすと、完全に青褪めて蒼白になる。
「・・なに、を」
「この部屋、音が通り難いので。
騒いでも無駄ですよ」
身を起こして、横腹に手を掛けて仰向けに転がすと、無防備感が増し
たのか薄ら涙を浮かべた目で小さく裏返った悲鳴が上がる。
「・・ゃ、っ、 みや、た、さ・・!」
・・・・・。
時々、このひとと自分がそっくりの容姿をしている筈だと言う事が信
じられなくなるんだが。
・・・深々と、溜息をついた。
「・・・・・。」
「・・・・・・・。
・・・・?
みやた、さん・・?」
恐る恐るといった風に掛けられた声に改めて溜息をつく。
「・・・・・・・・。
冗談、です。
“求導師様”をいきなりこんなところに閉じ込めたりしませんよ。
替えが居ないじゃないですか」
有り得ない、わけではないが。
「因みに、此処は感染症等の一時隔離用の部屋ですが普通の病室です。
ほら、手を出して」
取り合えず安心したいらしい牧野さんは、警戒心よりも状況改善を採
ったようだ。
上体を起こして躊躇いがちに差し出された手からあっさりと拘束を外
すと、それでもまだ困惑しているのか、両手の指先を確かめるように
動かしてみてから寝台の端に腰掛けているこちらを見遣った。
「・・・・。
なんで、ですか」
耐えられないことを言われたらどうしよう、という風なカオで恐る恐
る尋ねられる。
・・・本当に、正直に色々ぶち撒けたらどうなるんだろう。
とも思ったが。
ふと、結局、今日のコレは偶然の状況の気紛れに過ぎなくて。
自分でも一言で説明は出来ないと気付いて。
・・・止めた。
二十年以上も何とかしてきたのに、此処でどうしようというんだ。

 だから。

「・・・4月1日」
「・・・え?」
間抜けた声を上げた“片割れ”に、嘘であって嘘でない嘘をつく。
「エイプリル・フール。
・・・知らないんですか?」
「・・・・・・・
し、知ってますっ、けど・・・
確か、些細な悪戯をするもの、だって・・・・」
「私には些細なんです」
しれっと返して、では、お送りしましょう、と片手を差し出すと。
珍しく少し拗ねた様な表情を見せて、まだ納得していない様子だが
それでも手を掴んで寝台から降りた。

 休診日に呼んでいたので、横口から送り出すと。
黒衣を纏った何時もの背が数歩歩いた先で振り返る。
「・・・宮田さん」
「なんです」
「今日は間に合いそうに無いので、次くらいに考えます」
「・・・・・。」
変な所で負けず嫌いというか、は似ているのかもしれない。
意表をつかれて、思わず小さく吹き出してして笑うと、呆気に取ら
れたような顔の頬が染まってまた拗ねたような表情になる。
「・・頑張りますからっ」
「返り討ちにしてあげます」
ひらひらと手を振って背を向けると。
小さく、情けなさそうな溜息が零れる音が聞こえて。
またつい、笑いを噛み殺すのに苦労した。








蛇足。

最初に押さえつける場面を思いついて書いて、状況説明に手前と後ろ
を足してみた、というほぼ思いつきだけで出来ています。
どーしても説明始めるとごちゃごちゃに・・lllorzlll

酷いこと、は牧野さんがもしもああなったら(変異)・・の扱いとか。
何らかの要因で替えることとなって彼を幽閉したら、とか。
神代の命じるあれこれを色々目の当たりにさせたら、とか。諸々。

牧野の呟きの
何で私まだ、は儀式に臨んでいないから成否が出ていないってこと。

冗談、で強引に流せる材料ということで4・1を放り込んでみました。

次、は来年、ということなんですが・・。
この文の現在は何時なんだろう。

宮田の年齢27だと・・えーと医大って6年だっけ。
6年→研修2年(を終えてないと長にはなれないそうで)
18+6=24+2で26、で院長になれるのかな。
宮田父死亡っていつだろ。
辺境だし近隣に通うかで研修ってことで実質24くらいからとか・・。
ので、その想定で。25くらいかな。
(26だと警報当年になってしまうのでそろそろ精神的余裕がギリ)


チラ裏過ぎて電子の藻屑にしようかと思ったんだけど、これのひとつ前
に同様に思い付きで書いてみた2の阿部ED後想定のアベミカが出来が
ヒドすぎで対比でこれのほうがまだマシだと思っちゃったので置いてみ
まス。大変申し訳御座いませぬ・・TT

20140406-07:



因みに、題名どうしよう、で。

白から空白etcでblank
空白・完全否定・思い出せない・失敗etc
連語で知らん顔をするや気付かない振りをするなども
語源は中世仏語のblanc(白)

AprilFoolからFool
道化師、とか。
馬鹿にされる人・愚弄される人⇒〜の犠牲者、のような意味もあるらしい
語源は古仏語で更に元がラテン語のfokllis(空気袋, 特にふいご→ほらふき→愚か者)

というわけで
Fool's Blank でいいかなぁ・・。

となって決まりました。

和題付けるなら[愚者の空白]辺りだけど包括なので訳せないYo



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